内視鏡により、日本では胃癌が、米国では大腸癌の死亡が減少した

 

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20世紀が終わる頃、慶応大学の近藤誠氏が「癌を早期発見しても無駄」という本を出しセンセーションを起こしました(左図)。この本の内容については「正論もあるが間違いも多い」ということで、ほぼ評価は定まっています。私も「まともな本ではないが、全てが誤りとは思わない」し「世に問題提起をした」という点では評価しています

癌の中には「早期発見の有効な癌と、有効でない癌」があります。癌検診の対象になるのは「前者のみ」です。

下に、胃癌、大腸癌、膵臓癌の「stage別生存率」を示します(データはいずれも癌の拠点病院のもので、これが日本の標準的なものと判断していいものです)

(1)胃癌は早期に見つけるほど根治の可能性が高くなる

(2)大腸は胃ほどではないが、やはり早期発見のメリットが大きい

(3)しかし膵臓癌は残念ながら早期診断のメリットは無い(根治可能な段階で発見が難しい)・・・・・・・ことが、解ります。

同じ癌でも、どうしてこんなに違うのか?最近の分子生物学は、この問題を重点的に研究しています。解明の糸口(例えば細胞接着因子や癌の幹細胞など)は、かすかに見えていますが、まだ臨床応用の段階ではありません。

胃癌stage別生存率(室蘭総合病院HPより) 大腸癌stage別生存率(秋田日赤病院HPより) 膵臓癌stage別生存率(広島市民病院HPより)

日本人は胃癌、大腸癌の多い民族です。「不幸中の幸い」と呼ぶべきでしょうか、これらは「早期発見・早期治療の有効な癌」です。最近、日本で胃癌の死亡率が、米国で大腸癌の死亡率が大きく減少しているのですが、最大の理由は「内視鏡による早期発見が増えた」ことと考えられています。

最近、カプセル内視鏡、特殊な小腸内視鏡が開発されました。時々「これで小腸の早期癌も診断できる」と誤解されている方がいますが、それは間違いです。これは小腸癌の早期発見のためのものではありません。

もし、日本人が「膵臓癌、小腸癌の多い民族」だったなら・・・・近藤誠氏の理論は正しかったと言えます。

近藤氏も最近は雑誌で「胃癌、大腸癌は早期に見つけて内視鏡で切除するのが最善」と発言(持論の修正)をしていますので、その点は評価したいと思います(文責:本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)