内視鏡が最も嫌われる理由・・・・・・・それは「苦痛」です

・・・私たち専門医はこれこそが癌の早期発見の最大の障害と考えています

<胃内視鏡の苦痛>
胃内視鏡の苦痛は喉の奥を内視鏡が通る時に起こる「反射」,喉を管が通ていることによる異物感,胃が空気でふくらむことによる「ぼうまん感」,内視鏡が胃の中を動き回ることによる異物感などからなります。

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胃内視鏡の苦痛は本質的には「反射と異物感」ですので,「喉の敏感な」人ですとどんな名人が検査をしても苦痛を0にはできません。しかし「浅い麻酔」を使うことで信じられない位,検査が楽になります。緊張しやすい方、喉の反射の強いは遠慮することなく医師に鎮静剤の使用をお願いしましょう。

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<大腸内視鏡の苦痛>
これに対して大腸内視鏡の苦痛はもっと直接的です。これは腸管が屈曲した部分を硬い内視鏡を無理に押し込んで通過させることにより起きます。これは「浅い麻酔」で消える性質のものではありません。痛みの程度は患者さんの反射体質ではなく術者の技術によるものです。同じ患者さんでも術者が変わると「全く何も感じない」という場合から「お腹がやぶけるかと思ったほど痛い」という場合まで大きく違います。また大腸内視鏡の苦痛は内視鏡が腸の壁を強くおすために生じますので強い麻酔で痛みをごまかすと腸の壁をやぶる事故につながります。大腸内視鏡の苦痛は麻酔でごまかすのではなく挿入法の技術で克服すべきものです。

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<なぜ日本の全ての医師が麻酔を使わないのか?歴史的理由があります>
通常、「収益重視」の医師は積極的に麻酔を使います。医師の競争の激しい米国では医療はサービス業と化し、患者の争奪のため「内視鏡は眠ったままでおこなう」のが常識です。そして、麻酔による事故も多発しています。

一方、日本の内視鏡専門医は麻酔に冷淡です。これは歴史的背景があります。

そもそも胃カメラは日本で開発され、世界で最初の「胃カメラによる癌集団検診」も日本で行われました(越谷市で東大医師団が実施。下写真)。

しかし、初期の胃カメラは極めて太く、これを「患者さんに受け入れてもらうため」積極的に麻酔が使用されました・・・・その結果、胃癌発見で成果をあげたものの麻酔による重大な事故が多発しました。

当時の学会は、この問題を重視し「内視鏡の細径化と医師の技術向上を優先すべきで麻酔は邪道」という方針を打ち出し、これが日本の専門医の「王道」となりました。現在でもGoogleで「内視鏡 麻酔 死亡事故」で検索すれば・・・・「実は有名人が過去に胃カメラの麻酔で死亡していた」というおどろくべき情報が見つかるでしょう

2011年1月、米国の有名な医学誌に「内視鏡検査後に腹痛(内視鏡が腸管に傷をつける訳です)で救急外来を受診する患者の数が膨大で、医療経済的に看過できない」という報告がありました。この数字は日本では、全く考えられない頻度です。強力な麻酔を使う内視鏡がいかに患者に不利益か、科学的に証明された訳です

しかしながら、どんな名人が検査しても内視鏡の不快感を皆無にすることはできませんし、患者さんが内視鏡を倦厭して癌になるのは本末転倒です。最近は学会も、この問題に対し「軟化した方針」を出しています。

「内視鏡専門医が最新の機器を使い事故が起きない程度の軽い鎮静剤を使うことは、癌撲滅のために好ましいいことと考える。学会は麻酔に反対はしない。安全な軽い麻酔は推奨する。ただし、事故が起きた場合は全て専門医師の責任であり学会も厚生省も擁護はしない」・・・・・・というのが現在の内視鏡学会の正式方針です

胃も大腸も,本来は麻酔が不要な位の十分な技術をもった内視鏡専門医師が患者さんへの優しさから「浅い麻酔」を使うというのが最も理想的です。

私は内視鏡では軽い鎮静剤(お酒でほろ酔い気分位になります)を使うのを常としています。使わなくても「痛みの無い検査」はできますが・・・・・自分が検査を受けた経験から「精神的緊張・不安を除く」ために鎮静剤を使用すべきと考えているからです。私は、重大な事故の経験はありませんが、内視鏡検査後に患者さんが、つまづいた小さなトラブルは数例、経験があります。この問題は患者さんも医師も「軽く考えてはいけない」と考えています(文責:本郷メデイカルクリニック 鈴木雄久)